シリーズ・筑豊を元気にする人々-園田 浩・孝子

ハンバーガーには『猪鹿鳥(いのしかちょう)バーガー』という名前が付けられた。ハンバーグに牛肉ではなく、猪肉と鹿肉、鶏肉が使われているからだ。開発したのは嘉麻市にあるペンションりんご村のオーナー、園田さん夫妻。
ペンションではこれまでもカレーやミートパイなど、猪肉や鹿肉を使った料理が人気だったが、固くてケモノ臭いイメージからか敬遠する人もいた。
「小さい子どもや高齢の方も、食べてみたいと思ってもらえるような料理を作りたかったんです。そうして辿り着いた答えがハンバーガーでした」
 
福岡県は鹿と猪による農作物被害が特に大きく、かねてより農家は頭を悩ませていた。柵を張って動物を追い出すことは可能だが、それだけだと他地域の被害が拡大するだけで解決にはならない。街に迷い込んだ猪が人を襲ったという事例もある。被害を軽減するため、鹿や猪に対して駆除という措置がとられており、園田さん夫妻はいつも胸を痛めていた。
「やむを得ないですが、生きているだけで敵視され駆除される鹿や猪は、本当に可愛そうです。だからこそ、動物たちの命を無駄にしてはいけないと思うんですよ。それなのに駆除された動物の多くは棄てられてしまう。そんなの、やりきれません。この命を無駄にしたくなかったんです」
 
みんなが食べたいハンバーガー
猪肉と鹿肉を使ったハンバーガーの開発を始めた園田さん夫妻だが、その道は決して簡単ではなかった。猪や鹿の肉は、太らせた家畜と異なり脂身が少なく、ハンバーグ用のミンチに加工するには適していなかったのだ。
「肉の割合を変えてみたり、使う部位を変えてみたり。どうすれば美味しくて食べやすいハンバーグになるのか、たくさんの試行錯誤がありました。夫婦で食べた試作ハンバーグは数え切れません。でも、その甲斐あってこそ鶏モモ肉を使ったハンバーグに辿り着くことができたんです」
他の材料にもこだわった。道の駅うすいの協力で『猪鹿鳥バーガー』専用のバンズ(パン)が作られ、食感や風味を高めるために最も適した野菜が選ばた。
 
「それでもあとひとつ、何かが必要だったんです」
工夫を重ねたハンバーグ、専用のパン、選び抜いた野菜。すでに商品として充分な魅力と完成度を持っていた『猪鹿鳥バーガー』だったが、園田さん夫妻は満足していなかった。ハンバーグに残る猪の風味に違和感を感じていたからだ。猪のクセを活かすソースを作るためブレンドを一から見直し、様々なスパイスを使って実験を繰り返した。ケチャップ、マヨネーズ、マスタードで作ったソースに…ミルクを加えたときのことだった。
「牛乳を入れた瞬間にこれはイケるって予感がしたんですよ。においの強い肉を牛乳に浸す調理法がありますが、ソースにも牛乳だったんです」
こうして完成した『猪鹿鳥バーガー』は、販売を始めるや「猪とは思えない」「まったく臭くない」とペンションの人気メニューになった。
「美味しいという声を聞くと素直に嬉しいです。『猪鹿鳥バーガー』が観光資源になって、バーガーを食べるために筑豊を訪れるという人が増えるといいですね」
笑顔で語る園田さん夫妻だが、その笑顔の陰にはたくさんの苦労と熱い願いがある。美味しそうにバーガーを頬張る子どもの姿を見て、園田さん夫妻は幸せそうに微笑んだ。
 
 

 WING編集部 大西洋子

関連記事

WING

SIGOTTO-R

カテゴリー

ページ上部へ戻る