筑豊情報マガジン ウイング

NEW

カテゴリー別 最新記事

TAG LIST

タグ一覧

ひと

「知る」ことの楽しさ

エビス様と布袋様を足して2で割ったような館長として知られる、学び塾「知楽館」の館長 森 和茂さん。穏やかなお人柄だけでなく小・中学生から大人まで本当の学びとは何かを丁寧にわかりやすく教えてくれると評判の先生です。
学ぶことはけっして子どもだけのものではなく、大人も一緒になって勉強し、一緒に成長していくことが大切だと語られ心に響きました。
知ることは楽しく、ワクワクすること!!じっくり考える力を養うことの大切さを教えていただきました。
皆さんもぜひ参考になさってください。

何故、勉強しなくてはならないのか

この問題については、大人と子どもに分けて考えた方が良いと思います。一言で言うなら子どもの場合、勉強することは「智の備え」をすることだと思います。親から授かった身体に「智の備え」をすることでより強靭な身体が出来上がります。外敵の侵入を防ぐためには、論理的な思考能力を養うことが大切なのです。
「ああすれば、こうなる」と言った考え方や、「原因~結果」の考え方をもっていないと失敗することが多々あります。その「智の備え」を支えるのが、教育現場で行われている教科·科目ということになります。ですから、学校の授業を疎かにしないことが絶対的に必要といえます。
大人の場合は、自分の持っている、知識や技能を次世代に伝えるために勉強する必要があります。我々大人が子どもに残せるものは「教育」しかないと思います。そのために伝えるべき大人が学ぶ必要があるのです。
私には孫が2人いますが3歳の孫に「大きくなったら何になるの?」って娘が聞いたそうです。すると「大きくなったら爺ちゃんになりたい」といったそうです。思わず噴き出した娘ですが、その理由をきくと「爺ちゃんはカッコイイやん。何でも知ってるやん」って答えたそうです(笑)。小さな子どもにとって我々大人は智の宝庫かも知れません。ですから大人も学ぶ必要があると言えます。

10年前と今の子どもに違いは?

大きな違いが3つあります。まず1つ目は、書き順を理解できていない子どもが増えているという事です。漢字を意味がある文字と捉えるのではなく、記号として捉えているのかも知れません。文字は「上から下」が基本ですが、「下から上」に積み上げていくような子どももいます。
2つ目は、語彙が極めて少ないということです。本を読む、辞書を引くという習慣が減っていますので語彙も増えません。先日作文を書かせていましたら、「先生、自立ってなんですか?」と中学生に質問されました。語彙が少ないと他人との会話や、やり取りの中で意味がわからないまま話が進んだりします。これは恐ろしいことでもあります。
3つ目は、じっくり考えることが少ないことです。暗算の能力は非常に高くなったと思います。しかし、文章問題では、途中の式はまったく無く、いきなり答えが出てきます。そして「じっくり考える」ということをしないまま、答えを出そうとします。
親が子どもに使う言葉の中で一番は何だと思いますか。それは「早く」という言葉なのです。「早く起きなさい」「早く食べなさい」「早くしなさい」 等、枚挙に暇がありません。もちろん早くするということは大切なことです。しかし、それと同じくらいじっくりと考えることも大切なのです。「ああすれば、こうなる」という考えは「じっくり」からしか生まれません。

塾には大人の方もいらっしゃいますね?

はい。うちの塾は「大人も子どもも一緒に勉強しましょう」というのがコンセプトです。ですから大人の方も来塾されます。その中の1人の方は、中学校で不登校になり、ほとんど学校に行かなかったそうです。通信制の高校、専門学校に進学し将来は農業で生計を立てようと、ある農家の方にお世話になっているのですが、その日の計画書や書類を書けずに困り、今のままではいけないと思われ来塾されています。週に2回、仕事が終わってから国語、数学の勉強をされています。もう1年半経ちますが、「学ぶことの面白さ」に気づき積極的に学ばれています。新聞社のはがき随筆にも投稿され、2度も紙面に掲載されました。もう1人の方は、現職の先生です。 「自分の持っている100の力で生徒に教えるよりも120の力で教えることができれば生徒のためになる」と、来塾されています。他にもいらっしゃいますが、皆さん、子どもと同じところで勉強していただいています。子どもにとっては「大人になっても勉強する」 という姿を見る格好の機会になっています。

教員採用試験の勉強をされている方もいるとか?

専門の国語については試験で100点取れるような指導を行っています。他の教科については、勉強する場所の提供を行っています。その中で、私の経験を話したり、法規などについて勉強しています。集団討論、模擬授業、面接指導、すべてやります。
昨年度はコロナ禍で行われた採用試験でしたので、例年とは少し違いました。この講座をはじめて最低の合格率(50%)でしたが、例年は80%程度の合格率をあげていました。今年は必ずリベンジします。「教育は人なり」この言葉の意味を徹底して教えています。

コロナ禍の影響

昨年の緊急事態宣言以降、来塾する子どもは激減しました。それは、仕方の無いことですし、厳しい状況であることは今も変わりません。しかし、このような状況でも学びにきてくれる子どもがいます。少ない人数でも彼らに感染しないように、させないように徹底的に感染対策を行っています。マスク着用は当然ですが、講義室にパーテーションをいれ9名入室可能な部分を6名に減らしました。空気洗浄機や加温器そして、空間除菌剤などを取り付け安全·安心に学ぶ事ができる場所を作っています。
また、来塾できない子どもに向けて、オンラインで授業をしたり、質問を受け付けたりする準備も進めています。アナログ世代なので今、悪戦苦闘中です(笑)。

今後の夢を教えてください

高等学校を退職して8年目になります。
電気屋の友達と共に店舗をシェアしていますが、そのときの約束は「10年はやろう」でした。
あと3年の約束ですが今は少し変わってきました。70歳までは塾を続け、講演会もやりたいですね。
そしてその後、出家したいと思っています。
海の見える場所で、近隣の子どもを集め、勉強を教えたいと思っています。
「学ぶ」という言葉は 「まねぶ」(真似をする)というところからきています。
私の姿をみて、「まねぶ」 子どもが1人でもいてくれたら生まれてきた意味がありますね。

海の見える場所で近隣の子どもさん達を集めて勉強を教える─。とても素敵な夢ですね。ぜひ叶うといいですね。これからも学ぶことや「知る」ことの楽しさをたくさんの人達に伝えてください。ありがとうございました。
text_Masako Yamamoto

Profile
森 和茂
学び塾 知楽館 館長。
1960年(昭和35年)生まれ。
菰田中学校、嘉穂高等学校、駒澤大学へと進学。
卒業後は国語の教師、硬式野球の監督、部長として嘉穂高等学校、嘉穂東高等学校、小倉工業高等学校で勤務。
54歳で退職。
学び塾「知楽館」を経営の傍ら、田川科学技術高等学校、稲築志耕館高等学校で国語の非常勤講師を務める。
現在61歳。


学び塾 知楽館
〒820-0082 福岡県飯塚市若菜259-81 サブウォード若菜
080-5289-5052(森)
学び塾 知楽館

掲載内容は記事作成時の情報となります。

 

RELATED

関連記事

PAGE TOP

筑豊情報マガジンWINGの
おすすめ記事がLINEに届く!

LINEアカウントを友だち追加