ここは長崎街道の宿場町として栄えた飯塚の中心地、本町商店街。実は東京名物として有名な「ひよこ饅頭」が生まれた場所なのですが、その起源は鎖国真っ只中の江戸時代まで遡ります。少し歴史の話をしましょう。
国際的に孤立した鎖国の中でも、長崎の出島などを通じて海外の文化が浸透していったことは中学校の授業で教わる内容ですね。
そんな江戸時代に、海外から長崎に届けられた大量の砂糖と菓子作りの技法の数々。当時和菓子では考えられなかった洋菓子文化は、長崎市から北九州市を繋ぐ「長崎街道」を中心に、菓子の世界に革命を起こします。こうした歴史から、長崎街道は砂糖の道「シュガーロード」と呼ばれるようになり、令和2年度には文化庁の日本遺産にも登録されました。
お店は「メガネのサトー」として長年親しまれている
長崎街道とその宿場町の発展は、人・物・情報がいきかう流通拠点として、また筑豊炭田の中心都市として、重要な役割を担ってきました。その中心であるところの本町商店街で、創業95年の老舗眼鏡店「佐藤眼鏡店 本町店」にフォーカスをあてていきたいと思います。
昭和20年頃に東町商店街で撮影された写真
2代目から現店長(前田和憲さん)の祖父、つまり前田姓に引き継がれましたが、もとは祖父の義兄にあたる佐藤姓が初代店長として創業したお店。場所も東町商店街の方にあり、当初はメガネや時計の修理業のような形で始まったそうです。
昔は10店舗以上あったそうですが、現在は本町店とイオン穂波1Fの穂波店、そして後藤寺商店街の後藤寺店の計3店舗で営業されています。
大きな視力表が目印の本町店は3階建ての1階部分にあたる
飯塚の歴史ある商店街と共に歩みを続けてきた本町店ですが、2024年9月6日に大規模リニューアルを遂げました。
今回は、そうして新しくなったお店の姿に着目。これまでとの違いや店長の想いなどに触れつつ、お店の魅力を深掘りしていきます。
カラーリングも紺や白を基調としたモダンな雰囲気に
店内の内装部分で大きく変わったのは入って手前のスペース。以前までは広くスペースを使い多数のブランド眼鏡フレームが見られた場所は、大胆に半分程まで削減。それによりできた左側のスペースは、人が3人ほど入れるくらいのコンパクトな眼鏡工房として改装されました。
工房の壁につけられた大きな窓からは工房内を覗くこともでき、職人の技術を間近で触れることもできる。それだけでもただの眼鏡屋さんではないことが十分伝わるかと思います。
工房の中にもお邪魔しました。
お客様からの注文を受けてからお渡しするまで、一貫して工房内で完結させることができるという体制に。
大小様々な機械。店長の前田さんが日本有数の眼鏡産地「鯖江」に赴き、眼鏡職人の師匠のもと教わった技術無くては使いこなすことも困難でしょう。
また、機械を入れることにより従来よりも加工の幅が広がったこともポイント。よりお客様の要望に応えたフルオーダーメイド眼鏡の作製が可能になっただけではなく、障害があり市販の眼鏡がかけられないというお悩みに対しても的確に訴求し、これまでは難しかった視力のサポートを叶えることができるようになりました。
店長:前田和憲さん
鯖江の師匠から教わった職人技術により年々アップデートを続けられる店長ですが、その基礎となる部分は2022年に国家資格となった「一級眼鏡作製技能士」を持っていることも忘れてはいけません。
元々は眼鏡業界の中で定められていた資格であり、必要不可欠というわけではないのだそう。
しかし、前田さんは23歳の専門学校卒業時に現在の国家資格にあたる資格を取得し、その後の眼鏡業務にこだわりを持って取り組まれてきました。
そうして積み重ねた月日と、最高峰——鯖江の技術を取り入れようとするひたむきな姿勢が、現在の佐藤眼鏡店 本町店につながっているのだと感じます。
工房が完成し、筑豊随一の眼鏡職人として取り組む前田さんが作製するフルオーダーメイド眼鏡は、佐藤眼鏡店初のオリジナルブランドとして展開されています。
ブランド名はmasterpiece(マスターピース)。直訳で傑作、名作といった意味の言葉です。
細かなパーツを組む複数の工程を経て完成する眼鏡ですが、お客様の要望、想いひとつひとつをパズルのピースのようにつないでいくところはオーダーメイドならでは。
そうして完成する世界に一つだけの眼鏡が、最高傑作となるように。そんな想いをブランド名に込めたそうです。
お客様が希望するデザインを描き出すところから始まる
前田さんにオーダーメイドの眼鏡と市販の眼鏡の違いについてお聞きしました。
前田さん「オーダーメイドは1人1人、お客様の顔に合わせるということ。 1mmとか0.5mm単位で顔の左右の大きさとかも違ってくるので、そういったところも全部合わせながら作っています。」
選べるフレームの色・柄も様々
——自分の顔に合っていない眼鏡をかけ続けると様々な良くないことがあると。
前田さん「耳や鼻が痛くなりますよね。それから、レンズの焦点と眼鏡の焦点が中心になってないので目も疲れちゃう。オーダーメイドだとそういった問題がほぼ起こらないんですよ。
もちろんオーダーメイド以外にもフレームなどの販売もしてますけど、最後に必ず左右非対称に調整してからお渡ししています。
大手チェーン店では、実は左右対称のまま調整せずにお渡しすることが多いんですけど、うちではちゃんとお顔に対して対称になるように、眼鏡を非対称にしています。」
もちろんオーダーメイド以外にもフレームなどの販売もしてますけど、最後に必ず左右非対称に調整してからお渡ししています。
大手チェーン店では、実は左右対称のまま調整せずにお渡しすることが多いんですけど、うちではちゃんとお顔に対して対称になるように、眼鏡を非対称にしています。」
なるほど。なんだか逆説的なお話で、印象的な表現です。
前田さん「最初から左右対称が基本として作ってる眼鏡を非対称にしてお渡しすると、どうしても左右対称だったときの癖っていうのが残っている。その点オーダーメイドだと最初から非対称の状態で作れる。だから、長期的に見てもずれにくい。歪みにくい。そういったところも強みなのかもしれないですね。
“見え方”に対して総合的にアプローチしていくのがこだわりで、ただ見えるだけではなく、疲れにくく快適な眼鏡をお届けできるように心がけています。」
地域で信頼され続ける老舗眼鏡店ならではの想い、こだわりが伝わってきました。
慣れた手つきの手作業は見ているだけでも惹かれるものがある
——オーダーメイドをご希望されるお客様にはどのようなニーズがあるのでしょうか?
前田さん「1番は廃盤になった眼鏡の復刻。今は売られていないデザインですね。6~7割くらいはそういった注文を受けます。」
——ほしいけどもう売ってないから手に入らない。そんな眼鏡を作ってもらいたいお客様が多いということですか。
前田さん「そうですね。例えば、10年以上使い続けているお気に入りの眼鏡が古くなってきたから、似たような眼鏡を探すけどどこに行ってもないと。だから廃盤になった昔の眼鏡をそのまま復刻させてほしい。というのは多いかもですね。」
精密機械の補聴器は十数万はくだらない
——視力に関するサポート、補聴器の調整や販売も行っているとお聞きしました。こだわりやリニューアル後の変化について教えてください。
前田さん「まず、補聴器に関しても私と兄が認定補聴器技能者という資格を持っていて、専門の技能者としてしっかりと対応させていただくようにしています。そのうえでのこだわりですが、無理にお客様に販売しないことですかね。相談自体はたくさんいただいていますけど、どちらかというと私は買ってからの方が大事と考えています。というのも、補聴器ってお客様に合った音を育てていくものなんですよ。だから、聴力のサポートというのは、買ってからが本番みたいなところはありますね。」
——リニューアル後は、その音を育てる作業がより正確になったということでしょうか。
前田さん「そうですね。どこのお店でもそうですけど、限られた空間の中で静かな環境で音を聞いて検査するじゃないですか。今までは検査結果を踏まえて実際に日常生活で使用感を見てもらって、1週間とか10日毎ぐらいにお客様からフィードバックを貰う。それを3~4回繰り返して調整しながら、お客様が日常的に耳にする音の大きさや種類に当てはめていくことで正しく補聴器が機能するようになるんですね。この調整回数をリニューアル後は減らすことができるので、お客様の来店回数も少なくて済むようになる。お客様にとっても私達にとっても、この違いはかなり大きいと思います。」
——最後に、お客様に向けて伝えたいことや前田さん自身の夢や目標などあれば、教えてください。
前田さん「お客様に伝えたいことは、鯖江の眼鏡がここで作れるようになる、ということですかね。わざわざ福井県まで行かなくても、高品質のオリジナル眼鏡が飯塚で作れる。本町店に眼鏡を求めて訪れるお客様が増えて、飯塚の町や商店街が盛り上がれば嬉しいです。夢や目標で言うと、お店自体が「飯塚に来る目的」になってほしい。もっと言うと「憧れのお店になりたい」って感じです。値が張るのはわかっているけど、いつかあの眼鏡屋で買ってみたいよね。と思ってもらえるお店にしたい。福岡で眼鏡を買うなら、飯塚。いや、全国で見てもそれぐらい(名が挙がるくらい)にはなってほしいですよね。」
飯塚で生まれ育ち飯塚の地でお店を継承していく。その中にある想いは創業100周年に向けた新しい取り組みという形としての表れだけでなく、前田さんからの地元への恩返しという気概も感じられるような。そんな温かいお話を聞かせていただきました。
新たなスタートを切った老舗眼鏡屋さんの活躍に、今後も目が離せません。
【WING特別クーポン】
店舗でメガネご購入、レンズ替えの方、メガネスタンドをお一つプレゼント!!
店舗にて、こちらのスマホ画面を掲示されるか、「WINGを見た!」とお店の方にお伝えください。
有効期間:2024年12月6日(金)〜12月30日(月)
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Shop Information
佐藤眼鏡店 本町店
住所/〒820-0042 福岡県飯塚市本町7-20(飯塚本町商店街)
電話/0948-22-4001
営業時間/10:00~18:00
定休日/水曜日
駐車場/なし(近隣に有料駐車場あり)
★店頭にて駐車券をお渡ししています
Website/飯塚 田川のメガネ店 メガネのサトー
Instagram/@sato.glasses (本町店)
@meganenosatou4759 (総合アカウント)
佐藤眼鏡店 本町店
住所/〒820-0042 福岡県飯塚市本町7-20(飯塚本町商店街)
電話/0948-22-4001
営業時間/10:00~18:00
定休日/水曜日
駐車場/なし(近隣に有料駐車場あり)
★店頭にて駐車券をお渡ししています
Website/飯塚 田川のメガネ店 メガネのサトー
Instagram/@sato.glasses (本町店)
@meganenosatou4759 (総合アカウント)
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