筑豊情報マガジン ウイング

TAG LIST

タグ一覧

〈その3〉カニに学ぶ
 10年ほど前の事だ。早期退職した私は「半年間は仕事をせずに遊ぶぞ。」と心に決めていた。
 4月中旬のある日、姉のいる福岡市西区に遊びに行き、近くの海で釣りをしていた。狙いは「キス」だったのだが、釣れたのは、何故か、カニが五匹。
 「よし、このカニを飼ってみよう。」と思いすぐ近くにあるコメリへ行った。ペットショップで店員の方に「カニを飼いたいけどどうしたら良いですか。」と尋ねると、まずは人口海水を作り、濃度を測ってから飼育ですね。と言われた。市販の塩は加工品だから駄目だと言われ、値段が3倍以上する人工海水を買った。ワクワクしながら家へ戻り海水の濃度を測り、下に海砂を敷き、五匹を中へ入れた。餌は「赤虫」。全く食べない。昼間は砂の中にいて、ほとんど表には出て来ない。餌は全く食べない日が何日も続いた。
 このままでは餓死すると思ったので、餌を「イリコ」に変えた。二日経つが食べる様子がない。焦った。このままでは死なせてしまう。その時だ。一匹の「イリコ」が水流にのまれ、大きく動いた。その瞬間五匹が一斉に砂から飛び出し、餌のうばい合いが始まった。「生きた餌」しか食べないということを発見。それからいろいろなものを与え実験した。
 ある日、アサリ貝を水槽の中へ入れた。もちろん、アサリは砂に潜る。しかし、次の日には砂の上に貝の殻だけがある。「食べる所を見たい。」と思い一晩水槽を見張った。真相はこうである。カニは自分の足を使い貝を探す。探したら動かないように上に乗る。片方のハサミを口に突っ込み少し口を開け、反対のハサミで貝柱を切る。あとは食べ放題だ。
 とにかく、自然を観るのは面白いと感じた。約半年間生きて、色々な事を私に教えてくれた。しかし、水槽にくっついた、わずかな洗剤の跡に、全てのカニがやられてしまった。
 人工物の怖さを知った。
今ここを学ぶたのしさ | TOP


1 2

3

4
PAGE TOP