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17: 左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)にセマグルチド
肥満を合併した左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)症例に対してグルカゴン様ペプチド1受容体作動薬(GLP-1Ag)のセマグルチドの週一回の皮下注投与で有意な自覚症状・運動機能の改善・体重減少が認められた、との臨床試験(STEP HFpEF)の結果が2023年8月25日のNew England Journal of Medicineニューイングランド ジャーナル オブ メディシン誌に掲載されました。
GLP-1は、小腸から分泌されるホルモンで、食事を摂り血糖値が上昇すると分泌され、膵臓にある受容体に結合してインスリンの分泌を促し血糖値が低下します。GLP-1AgはGLP-1に似た物質でGLP-1受容体に作用する糖尿病治療薬で、低血糖に成り難い利点があります。様々な研究で肥満・過剰な皮下脂肪沈着は、炎症反応を増加させHFpEFの進行に重要な役割を果たしている事が判っています。
今回発表されたSTEP HFpEFは、13カ国96施設が参加し、18歳以上・BMI30以上の肥満・左室駆出率45%以上のHFpEF・NYHA分類でⅡ、Ⅲ、Ⅳ度の心不全の自覚症状がある・カンザス市心筋症質問票(心不全評価の為開発された、身体制限・症状・自己評価・社会活動の12の項目に点数を付け100点が制限・症状が無い)の総点数(KCCQ-CS)が90点未満・6分間歩行で最低100mは歩ける529症例をセマグルチド2.4mg週一回皮下注投与群263例、プラセボ群266症例に分け52週治療したランダム化比較試験です。主要評価項目は、52週時点でのKCCQ-CS・体重の試験開始時からの変化量で、副次評価項目は6分間歩行・炎症反応の指標であるC反応蛋白(CRP)の開始時から52週での変化量です。
セマグルチド群のKCCQ-CSは平均16.6点増加しており、プラセボ群の平均8.7点増加より有意に多く、体重はプラセボ群が平均2.6%減少したのに対してセマグルチド群は平均13.3%の有意な体重減少が認められました。6分間歩行ではプラセボ群の平均1.2mに対し、セマグルチド群では平均21.5mと有意に延長しており、CRPの平均変化率はプラセボ群7.3%の低下に対しセマグルチド群は43.5%と有意に低下していました。
HFpEFの治療薬として同じく糖尿病治療薬であるSGLT-2阻害剤のエンパグリフロジンとダパグリフロジンがすでに認可されており、HFpEFは代謝疾患ではないか?とNew England Journal of Medicine誌でのSTEP-HFpEF試験の解説論文は提起しています。
セマグルチド投与に因る自覚症状・運動機能の改善が、ダイエットでの体重減少・他の薬剤による体重減少でも同様に認められるかについては未だ不明ですが、研究グループ・解説論文著者は、セマグルチド独自の効果と考えている様です。
セマグルチドの肥満を伴ったHFpEFへの適応拡大へ向けて更に大規模研究が進められるでしょう。
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