筑豊情報マガジン ウイング

NEW

カテゴリー別 最新記事

TAG LIST

タグ一覧

06: 左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)にはthe fantastic fourで
左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)=収縮能の低下した心不全の内服治療薬としては、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACEI)・アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)・β遮断薬(β-B)・ナトリウム-糖共役輸送体2阻害剤(SGLT2I)・ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)・アンジオテンシン受容体-ネプリライシン阻害剤(ARNi)・可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激剤・イバブラジン・利尿薬・ジギタリス・血管拡張薬など11種類が使用可能です。この内β-B・SGLT2I・MRA・ARNiの4種類は、the fantastic four(ファンタスティック・フォー:マーベルの映画の題名と同じですが、素晴らしい4種類の薬の意味)と呼ばれ、2021年のヨーロッパ心臓病学会の心不全治療ガイドラインではHFrEF治療の第一選択薬に挙げられています。
では、この4種類の治療薬を全て併用した治療効果はどの程度なのだろう?と統計学的方法を用いて過去の1987年から2020年までの75の適切な臨床研究の95444症例のデータを分析した論文が2022年2月Journal of the American College of Cardiologyジャーナル オブ ジ アメリカン カレッジ オブ カーディオロジーに発表されました。その結果、無治療だった場合と比較してβ-B+MRA+ARNi+SGLT2Iで61%も死亡率を低下させ、70才の患者に5年の延命効果が付加される事が判りました。今までのHFrEFへの通常の治療は、ACEI若しくはARB+β-Bですが、それとこの4剤併用療法を比較した論文の分析では、4剤併用療法は通常療法に比較して心血管死・心不全による入院数を62%も減少させていました(2020, Lancetランセット)。
β-B+MRA+ARNi+SGLT2Iの4剤併用療法の有効性は確認されましたが、通常療法から4剤併用療法に移行する順番、4剤を開始する順番で効果に差が出るのか?を確認した過去の大規模臨床試験のデータをメタアナリシス=高次分析した論文が2022年4月European Heart Journalヨーロピアン ハート ジャーナルに発表されました。ACEIを導入し6週後にβ-Bを導入し12週目にMRAを導入し、16週目にACEIを中止しARNiを導入し22週目にSGLT2Iを導入する、通常のスケジュールとfantastic fourを1種類ずつ追加するスケジュールの6つのパターンでイベント(心血管死+心不全による入院)発生数を比較したシミュレーションでは、SGLT2I導入1週間後にMRAを導入し3週目にARNiを導入し8週目にβ-Bを導入するパターンで最もイベントの発生が抑制された事が判りました。全ての死亡数の抑制効果では、SGLT2I導入1週間後にMRAを導入し3週目にβ-Bを導入し7週目にARNiを導入するパターンで最も大きい事が判明しています。
以上の報告は、示唆的ですが、あくまで統計学的分析・統計学的シミュレーションであり、実際にどうかは、臨床試験で確認される必要があります。
Hospital + Note 2 | TOP
1/Oct/2022
1 2 3 4 5

6

7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
PAGE TOP

筑豊情報マガジンWINGの
おすすめ記事がLINEに届く!

LINEアカウントを友だち追加