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12: 狭心症に漢方薬
2023年3月に日本循環器学会冠攣縮性狭心症かんれんしゅくせいきょうしんしょうの診療指針が10年振りに改訂されました。その中で、コントロール困難な冠攣縮性狭心症に漢方薬を追加する事で自覚症状が改善したとの症例報告が紹介されていたのが、眼を惹きました。
冠攣縮性狭心症とは、心臓の冠動脈が一過性に局所的に過収縮する事で、冠動脈の血流が低下し心筋虚血になる狭心症であり、動脈硬化に因る器質的な冠動脈の高度の狭窄はありません。喫煙・飲酒で誘発され、夜間・早朝の安静時に発症する事が多く、通常は硝酸薬・カルシウム拮抗薬・冠拡張剤(ニコランジル)の投与が著効し自覚症状が消失します。
2~3種類の薬を併用しても胸痛が残存する難治性冠攣縮性狭心症は、狭心症症例の13.7%を占めると云われます。その難治性冠攣縮性狭心症症例に四逆散しぎゃくさん桂枝茯苓丸けいしぶくりょうがんのエキス剤を追加して胸痛が完全に消失した2症例の報告と、柴朴湯さいぼくとうを追加して自覚症状の著明な改善を示した3症例の報告を新しい診療指針では取り上げていました。
四逆散は、柴胡さいこ芍薬しゃくやく甘草かんぞう枳実きじつを合わせた柴胡剤の一つで不眠・抑鬱・イライラを伴う肝気鬱結かんきうっけつに対して処方されます。冠攣縮性狭心症には不安や鬱状態を伴う症例が多く、四逆散が自律神経失調状態を含む心因性症状の改善に有効である事を指摘されています。
桂枝茯苓丸は、桂皮けいひ・芍薬・桃仁とうにん茯苓ぶくりょう牡丹皮ぼたんぴの合わさった駆瘀血剤くおけつざいの一種です。瘀血おけつは、漢方では血の滞り・血流障害を指す概念で、動脈硬化性疾患・狭心症も漢方医学では瘀血が原因と考えられます。実際、桂枝茯苓丸には、細動脈の拡張・赤血球の鬱滞の改善・血管内皮機能を改善させて血管内皮由来の一酸化窒素を増加させるなどの薬理作用がある、とも云われています。慢性の狭心症例に駆瘀血剤の桂枝茯苓丸を追加する事は理に適っている訳です。
柴胡剤と駆瘀血剤は相性が良く、漢方医学では慢性疾患にしばしば併用されています。
柴朴湯さいぼくとうは、柴胡剤の小柴胡湯しょうさいことう半夏厚朴湯はんげこうぼくとうの合わさった処方で喉の詰まった/異物感のある気鬱に用いられています。
冠攣縮性狭心症の治療の第一選択薬は、西洋医学の標準治療薬(カルシウム拮抗薬・冠拡張剤・硝酸薬)であり、漢方薬は、それらへの上乗せで使用すべき事を最後に強調します。
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