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05: 左室駆出率の保たれた心不全への第二の治療薬
左室駆出率さしつくしゅつりつの保たれた心不全(HFpEF)とは、全身に酸素の富んだ動脈血を送るポンプという心臓の一番重要な役割を主に司る左心室の収縮力は正常であるにも係わらず、心不全の症状・理学所見・検査所見を示す病態です。HFpEFには、現在、糖尿病の治療薬でもある、ナトリウム・糖共役輸送体2(SGLT2)阻害剤であるエンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス®)が唯一適応を取っています。2021年8月に発表された大規模臨床試験:EMPEROR-Preserved Trialエンペラープリザーブド トライアルでエンパグリフロジンは、HFpEFに対して有効性が確認されました。
2022年8月27日、New England Journal of Medicineニュー イングランド ジャーナル オブ メディシンに、SGLT2阻害剤のダパグリフロジン(商品名:フォシーガ®)のHFpEFとやや左室駆出率の低下した心不全への効果を検証した大規模臨床試験:DELIVER Trialデリバー トライアルの結果が発表されました。
DELIVER Trialは世界20ヵ国の353施設の参加したランダム化二重盲検比較試験で、左室駆出率が40%以上の心不全6263症例を通常の心不全治療に追加してのダパグリフロジン10mgx/日投与群とプラセボ投与群に分けています。そして両群間の、予期しない入院か緊急での入院をした心不全増悪と心血管死を一次結果として中央値2.3年(最短1.12年~最長3.25年)の観察期間で比較しています。
観察期間中の一次結果はダパグリフロジン投与群が3131症例中512例、プラセボ群では3132症例中610例とダパグリフロジン投与群が有意にハザード比0.82でプラセボ群より少なく、特に心不全増悪例数はハザード比0.79とダパグリフロジン投与群で少ない事が判りました。このダパグリフロジンの効果は、左室駆出率60%以上の症例群と左室駆出率60%以下の群でも変わりは有りませんでした。但し、肥満の指標であるBMIが30未満のグループよりBMIが30以上のグループの方がダパグリフロジンの効果は著明で、収縮期血圧が128mmHg以下のグループより収縮期血圧が128mmHg以上のグループの方がダパグリフロジンの効果が優るという下位グループ間での比較結果が出ています。
以上の結果からHFpEFに対してダパグリフロジンが有効である事が判明しました。ダパグリフロジンは既に左室駆出率の低下した心不全に対する適応があり、近い将来HFpEFへの適応もエンパグリフロジンに次いで認可されるでしょう。
そもそも糖尿病治療薬であるSGLT2阻害剤が何故心不全に対して有効性を示すのか、未だ解明されておらず、更なる研究が必要でしょう。
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