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24: HELT-E₂S₂スコアはCHADS₂スコアに取って代わるか
心房細動では、無秩序で高頻度の心房の異常興奮で効果的な心房収縮が無くなるため、心房内で血液が鬱滞うったいして血栓が形成され易くなります。血栓が飛び脳血管に詰まる脳塞栓症は、死亡率が10%を超え重篤な事が多く、心房細動はその原因の6割を占めます。そこで、心房細動症例には塞栓症予防の為CHADS₂スコア(心不全・高血圧・高齢≧75歳・糖尿病・脳梗塞・一過性脳虚血発作の既往)CHA₂DS₂-VAScスコア(心不全・高血圧・75歳以上・糖尿病・脳梗塞の病歴・心筋梗塞を含む血管疾患の病歴・65〜74歳・女性)の該当項目の有無を点数化して塞栓の危険性を評価しDOAC(直接経口抗凝固薬:ダビガトラン・リバロキサバンなど)を用いて抗凝固療法を行っていました。
しかし、これらの危険性評価スコアは、海外で開発されたもので、そのまま日本人に適応出来るかどうかは不明でした。そこで5つの臨床研究が行われ、そのデータを解析した結果が2021年に日本循環器学会誌に掲載され、2024年3月に改訂された日本循環器学会の不整脈治療ガイドラインにも掲載・紹介されました。
先ず前記の国内での研究結果から、高血圧・年齢(75~84歳)・るいそう(BMI18.5未満)・持続性/永続性心房細動・超高齢(85歳以上)・脳卒中の既往の6つの危険因子が確認されました。そしてこれらの6つの危険因子を危険度で重み付けを行い、HELT-E₂S₂スコア(H:高血圧1点・E:年齢75~84歳1点・L:BMI18.5未満1点・T:持続性/永続性心房細動1点・E₂:年齢85歳以上2点・S₂:脳卒中の既往2点)が新たに作成され、危険因子の有無の合計点数が高い程、脳梗塞の危険性が高いと見做しました。HELT-E₂S₂スコアの点数別の脳梗塞の発症率は、抗凝固療法を行わなかった場合、0点で0.57%/年、1点で0.73%/年、2点で1.37%/年、3点で2.59%/年、4点で3.96%/年、5点以上で5.82%/年と点数依存的に上昇しています。抗凝固療法を行った場合の脳梗塞の発症率は、HELT-E₂S₂スコア2点以上で抗凝固療法無しの場合の半分程でした。
HELT-E₂S₂スコアをCHADS₂スコアと較べると、糖尿病・心不全は危険因子から省かれ、新たにるい痩/低体重が挙げられています。不整脈治療ガイドラインは、るい痩・50kg未満の低体重は、癌や慢性閉塞性肺疾患などの悪液質の指標である可能性を指摘しています。又、糖尿病については、発症から10年以上経過した症例・HbA1cが8%以上の症例・インスリン治療中の症例で心房細動合併例での脳梗塞の危険性が高く、この様な糖尿病症例に対しては抗凝固療法導入を検討すべき、と提言しています。心不全についても、心不全で入院した30日以内で脳梗塞発症の危険性が5~17倍も高く、心不全入院から360日後でも脳梗塞のハザード比は入院していない症例の3.94倍との報告もある事への注意を呼び掛けています。
そして重要な事に、HELT-E₂S₂スコアでは合計点数が何点以上から抗凝固療法を開始すべきか、が未だ確定されていません。従ってまずCHADS₂スコアを使い、HELT-E₂S₂スコアは参考程度にするのが実際的でしょう。
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