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22: 低血糖は心血管疾患発症の原因ではない
糖尿病症例で、低血糖と心血管疾患発症に関連性がある事は以前から知られていました。
2008年~2009年に発表されたACCORDアコード研究・ADVANCEアドヴァンス研究・VADTヴァルト研究では糖尿病症例に対して標準療法とHbA1c7.0%未満を目標とした強化療法を比較すると強化療法群で心血管疾患による死亡と総死亡が多かった、との衝撃的な結果となりました。そして、この結果は低血糖により心血管疾患が誘発された為だ、との見解がその後広く受け入れられる様になりました。
2024年1月3日付でJAMA®誌にドイツの研究グループによるDPP-4阻害剤のリナグリプチンとプラセボを比較したCARMELINAカルメリーナ研究(2013~2016年)とリナグリプチンとSU剤を比較したCAROLINAカロライナ研究(2010~2018年)の二次解析の結果が公表され、低血糖と心血管疾患発症は、CARMELINA研究では双方向性の関連性が認められたがCAROLINA研究では関連性が認められなかった、と結論しています。
血糖値54㎎/dl未満または他の人の介助を必要とする低血糖によると推定される重症有害事象を低血糖と定義し、初回低血糖発作とその後の心血管死・非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中・心不全による入院の関連性、非致死性心血管事故・心不全による入院とその後の低血糖発作の関連性を評価しました。
1965年発表されたAB. Hillの因果性認定の9つの判定基準(関連性の強度=2つの事象が頻回に観察されるか・一貫性=2つの事象が別の観察者によっても別の機会・場所・環境で繰り返し観察されるか・2つの事象の関連性に特異性があるか・時間的前後関係=原因となる事象は必ず結果とされる事象の以前に確認されなければならない・生物学的勾配=2つの事象に濃度依存性があるか・妥当性=因果関係の説明はもっともらしいか・整合性=因果関係の説明はそれまでの知識・事実と矛盾しないか・実験=実験によって因果関係が確認されるか・類推=似たような状況の似たような因果関係を適応出来るか)を著者らは参考にしています。CARMELINA研究では低血糖後の心血管事故+心不全入院に関連性があり、心血管事故+心不全入院後の低血糖に関連性がある、つまり双方向性の関連性がある、という解析結果でしたが、この事は時間的前後関係で低血糖は心血管事故+心不全入院の原因とは見なされない事を意味します。又、低血糖発作後60日以内の心血管事故+心不全入院の感度分析では両研究ともに関連性を認められていませんでした。これ迄、低血糖発作で交感神経系が活性化されアドレナリンが多く分泌され血圧が上昇し心臓への負荷が増加する事、低血糖発作で低カリウム血症も誘発され心電図でQT時間が延長し、心室性頻拍・心房細動などの不整脈が誘発される事が心血管事故の発症の機序とされていましたが、それもこの解析結果では当てはまらない様です。
低血糖を出来るだけ避ける事は当然ですが、低血糖を避ける様にしても心血管事故を回避できるとは限らない事をこの解析結果は示唆しており、糖尿病症例での血圧を130/80mmHg未満に、LDLコレストロールを120mg/dl未満に管理する必要性を再度強調する結果だと考えられます。
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