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50: 深層学習で突然死の新たな心電図指標を発見
2026年6月24日にNature Onlineネイチャー オンラインに、AIの1種である深層学習ディープ·ラーニングを用いて一年以内に突然死を起こした症例の分析から心臓突然死(不整脈死)の心電図の新たな特徴的所見を特定した、との論文が掲載されました。
心臓突然死は、米国だけで毎年数十万例起こっており、心室頻拍・心室細動によるものが大部分ですが、現在の知見では、それを完全に予測するには到っていません。深層学習を死因に関して信頼できる情報と結びついた大規模な心電図データに適用して、心臓突然死の予測モデルを作成し、生成モデルを用いて心電図の高リスク群の波形を可視化し、それを米国・台湾のデータも用いて外部検証する研究が今回実施されました。
先ずスウェーデンの2010~2016年に記録された441,614症例の心電図と死亡診断書・電子カルテの記録と連携させ、そのデータの40%は鍵付き保管され、論文が受理された後に初めて評価に使用されました。残りのデータの30%でモデル作成に使用し、30%を検証に用いています。外部検証に米国の251,858例の心電図・国立台湾大学の心停止症例記録も使用されました。予測モデルの突然死高リスク群は、データの2.2%を占めて年間突然死亡率7.0%に設定され、モデルの曲線下面積(AUC)は0.872と高い値を示しました。
今回深層学習で発見した突然死の危険性が高い心電図の特徴は、左脚前枝ブロックと胸部誘導でのR波増高不良、そしてaVL誘導でQRS波形終末の鈍化(slurringスラリング):陰性S波が観られずR波終末がなだらかに基線に戻る、でした。特にaVL誘導の所見は今まで指摘されておらず、このaVL誘導のslurringは、それ単独で有意な危険所見であることをスウェーデンと米国の結果は示していました。
では、このaVL誘導QRS波形終末のslurringは、電気生理学的に何を意味しているのでしょうか?著者たちは、QRSの電気的脱分極が時間の経過と共に無秩序化しており、これは脱分極過程が累積的に悪化している事を示唆すると考察しています。この変化は心臓全体のびまん性の変化で、aVL誘導はその異常を捉えるのに最適な誘導だったのでしょう。そして、症例の10%に施行された心臓MRIの異常から、その機序としてびまん性の心筋線維化を著者たちは想定しています。心筋細胞間に電気的に不活性なコラーゲンが沈着し伝導を変化させ、その初期の変化として脆弱な左脚前枝にブロックが出現、aVL誘導QRS波形終末のslurringが出現し、不整脈(心室頻拍・心室細動)→突然死という一連の機序の仮説を立てています。この仮説を検証するには、心筋生検・心臓MRI等を含む更なる研究が必要でしょう。
この心電図異常の発見は、1986年のブルガダ型心電図異常の発見以来の衝撃を臨床現場に与えるでしょうが、aVL誘導QRS波形終末のslurringを見つけたら、直ぐ患者に植込み型除細動器を勧めるべきでしょうか?それは現時点では勇み足となるでしょう。
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