01: 末梢動脈疾患
末梢動脈疾患(PAD)とは、冠動脈以外の動脈の閉塞性疾患を指し、動脈瘤などは含めません。特に四肢動脈の疾患が多く、かつて閉塞性動脈硬化症(ASO)と呼ばれたものが現在も主な疾患で、現在は下肢閉塞性動脈硬化症(LEAD)と呼ばれます。2022年3月にPADの診療指針が改定され、それに基づいて説明します。
LEADは、大部分が動脈硬化性の疾患ですから、動脈硬化の危険因子:高齢・男性・喫煙・糖尿病・高血圧・脂質異常症・慢性腎臓病/透析を合併している症例では、一般症例と較べ、LEADの有病率は高くなります。
LEADの症状の80%は、間欠跛行です。間欠跛行とは、特定の部位の筋肉のだるさ・痛みの為歩行継続が不能となるが、少し休むと可能になる、という症状を繰り返すもの、と定義されます。整形外科疾患の腰部脊柱管狭窄症や変形性股関節症などでも同様の症状を訴える事がありますが、LEADには、痛みが一定の距離の歩行で出現し数分の休息で軽減する・疼痛が出現する部位が患者によって特定の部位に起こる・立位/下肢挙上などの体位の影響を受けないなどの特徴があり、詳細な問診が必要です。
身体所見では、下肢の動脈拍動の減弱・皮膚の色調の変化・温度の変化(冷感)・乾燥肌・筋萎縮・爪の肥厚などを認めます。
検査では、足関節/上腕血圧測定比(ABI)が良く行われます。これは、足首と上腕の左右どちらかの高い方の収縮期血圧の比で、正常は1.00~1.40、0.90以下は異常低値で下肢動脈の高度狭窄・閉塞が疑われます。CT・MRI・血管エコーなどの画像検査で病変の評価をします。
治療は、先ず動脈硬化の危険因子に対する治療・禁煙/食事などの生活習慣の改善が必要です。薬物療法では、血管閉塞の予防の為、抗血小板薬投与か抗凝固療法が行われます。間欠跛行の症状改善にはシロスタゾール(商品名 プレタール®)投与が日本でのエビデンス(根拠)を有する唯一の治療法です。海外ではLEADに対してスタチン投与が強く推奨されています。運動療法は、症状改善・歩行距離の延長に高いエビデンスを有しており、跛行を生じる強度で歩行し痛みが中等度になったら休む、を繰り返し一回30~60分間、週に少なくとも3回、3ヶ月間の歩行訓練が、可能であれば監督下で、強く推奨されています。
薬物療法・運動療法でも症状改善が不十分の場合、血行再建術が検討されます。解剖学的に腹部大動脈から直ぐに分岐した腸骨動脈病変では、バルーンカテーテル・ステントグラフトを用いた血管内治療(EVT)が、治療成績が良好で合併症が少ない事から、第一選択です。腸骨動脈より更に末梢の大腿動脈~膝窩動脈の領域では、病変の長さが25cm未満であれば、EVT、病変長が25cm以上であれば外科的に血栓内膜除去術・バイパス術が選択されます。膝窩動脈より末梢の単独病変に対しては、症状改善を目的としたEVT・外科的血行再建術は基本的には推奨されていません。
LEADは、大部分が動脈硬化性の疾患ですから、動脈硬化の危険因子:高齢・男性・喫煙・糖尿病・高血圧・脂質異常症・慢性腎臓病/透析を合併している症例では、一般症例と較べ、LEADの有病率は高くなります。
LEADの症状の80%は、間欠跛行です。間欠跛行とは、特定の部位の筋肉のだるさ・痛みの為歩行継続が不能となるが、少し休むと可能になる、という症状を繰り返すもの、と定義されます。整形外科疾患の腰部脊柱管狭窄症や変形性股関節症などでも同様の症状を訴える事がありますが、LEADには、痛みが一定の距離の歩行で出現し数分の休息で軽減する・疼痛が出現する部位が患者によって特定の部位に起こる・立位/下肢挙上などの体位の影響を受けないなどの特徴があり、詳細な問診が必要です。
身体所見では、下肢の動脈拍動の減弱・皮膚の色調の変化・温度の変化(冷感)・乾燥肌・筋萎縮・爪の肥厚などを認めます。
検査では、足関節/上腕血圧測定比(ABI)が良く行われます。これは、足首と上腕の左右どちらかの高い方の収縮期血圧の比で、正常は1.00~1.40、0.90以下は異常低値で下肢動脈の高度狭窄・閉塞が疑われます。CT・MRI・血管エコーなどの画像検査で病変の評価をします。
治療は、先ず動脈硬化の危険因子に対する治療・禁煙/食事などの生活習慣の改善が必要です。薬物療法では、血管閉塞の予防の為、抗血小板薬投与か抗凝固療法が行われます。間欠跛行の症状改善にはシロスタゾール(商品名 プレタール®)投与が日本でのエビデンス(根拠)を有する唯一の治療法です。海外ではLEADに対してスタチン投与が強く推奨されています。運動療法は、症状改善・歩行距離の延長に高いエビデンスを有しており、跛行を生じる強度で歩行し痛みが中等度になったら休む、を繰り返し一回30~60分間、週に少なくとも3回、3ヶ月間の歩行訓練が、可能であれば監督下で、強く推奨されています。
薬物療法・運動療法でも症状改善が不十分の場合、血行再建術が検討されます。解剖学的に腹部大動脈から直ぐに分岐した腸骨動脈病変では、バルーンカテーテル・ステントグラフトを用いた血管内治療(EVT)が、治療成績が良好で合併症が少ない事から、第一選択です。腸骨動脈より更に末梢の大腿動脈~膝窩動脈の領域では、病変の長さが25cm未満であれば、EVT、病変長が25cm以上であれば外科的に血栓内膜除去術・バイパス術が選択されます。膝窩動脈より末梢の単独病変に対しては、症状改善を目的としたEVT・外科的血行再建術は基本的には推奨されていません。
2/May/2022