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13: 睡眠呼吸障害
睡眠時無呼吸症候群とも呼ばれていた睡眠呼吸障害の循環器領域での診療指針が、2023年3月に13年振りに改訂されました。新たに記載された事では、植え込み型舌下神経刺激法が2021年6月に保険収載され、治療の選択肢が増えた事が大きな変化です。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、睡眠中に鼾をかき、何回も呼吸が止まる疾患で、国内に940万~2200万人の患者さんがいると推測されています。OSAは糖尿病や様々な疾患を悪化させる危険性があり、特に循環器疾患に合併している確率が高い事が判っています。日本循環器学会の診療指針に拠ると、OSAは高血圧症の59%、難治性の高血圧症では86%、心不全の76%、心房細動の81%、急性冠症候群の49%に合併しています。重症のOSAの人の糖尿病発症の危険性は、1.4倍、心房細動発症の危険性は4.0倍、心室性期外収縮の危険性は1.7倍もOSAのない人と較べ高く、狭心症・心筋梗塞発症の危険性は1.7倍と報告されています。
OSAの診断は、睡眠ポリグラフ検査等でAHI(無呼吸・低呼吸指数:睡眠中一時間当たりの無呼吸・低呼吸の回数。正常値は5未満)を算出し、重症度を評価します。自覚症状のあるAHI>20の症例に対して、鼻マスクを用いた持続陽圧呼吸(CPAP)療法の保険適用があり、CPAP療法導入は、高血圧を改善し不整脈を減少させ、狭心症・心筋梗塞・脳卒中などの発症を抑制し死亡率を下げる効果があります。
植え込み型舌下神経刺激法は、鎖骨下の皮下に植え込まれたパルスジェネレーターに吸気相の圧変化を感知する肋間に埋め込まれたセンサーリードが繋がっており、ジェネレーターから刺激リードを通じて舌や咽頭開大筋の支配神経である舌下神経に直接電気的刺激を送り、吸気時に気道を拡大して閉塞を防止する方法です。侵襲性のある治療法ですから、治療の適応基準が以下の通りにあります:①AHIが20以上のOSAである ②CPAP療法が不適、不忍容である ③扁桃肥大等の重度の解剖学的異常が無い ④18歳以上である ⑤BMIが30kg/㎡未満である ⑥薬物睡眠下内視鏡検査で軟口蓋の同心性虚脱を認めない ⑦中枢性無呼吸の割合が25%以下である。
2014年に植え込み型舌下神経刺激法の多施設前向き臨床試験(STAR Trial)が行われ、124人の症例(平均年齢54.5歳 男性83%、BMI:28.4kg/㎡)の12ヶ月後のAHIの中央値は29.3から9.1と68%減少し、5年間の追跡調査でも有効性は持続していました。海外では早くから認可され、2019年までに、米国・ドイツで約5千人が植え込み型舌下神経刺激法の治療を受けたと報告されています。日本で診療可能な施設はまだ少ない様ですが、CPAP療法に不忍容の症例への代替療法として広がるかもしれません。
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