筑豊情報マガジン ウイング

NEW

カテゴリー別 最新記事

TAG LIST

タグ一覧

25: 急性心筋梗塞後の二次予防に必ずしもβ遮断薬は必要ない
2024年4月7日付のNew England Journal of Medicineニューイングランド ジャーナル オブ メディシンにまた常識を覆す様な報告が掲載されました。
急性心筋梗塞後のβ遮断薬の長期間投与は死亡率を20%近く減少させる、との研究結果から、現在の欧米・日本の治療指針では急性心筋梗塞後のβ遮断薬使用を推奨しています。しかし、その根拠となった研究は1980年代に発表されたもので、現在では、高感度心筋トロポニンを用いて診断し、経皮的冠動脈介入治療(PCI)を行って再灌流さいかんりゅうし梗塞巣を出来るだけ小さくし、強力な抗血栓剤・高強度のスタチン・レニン―アンジオテンシンーアルドステロン系拮抗薬を用いて再発予防が行われています。現在の“再灌流時代”ではβ遮断薬は、必要ないかもしれないのです。
スウェーデン・エストニア・ニュージーランドの45施設が参加した前向き無作為化比較試験(REDUCE-AMI)は、2017年9月から2023年5月に登録された急性心筋梗塞5020症例を冠動脈造影で確認し、左室駆出率は50%以上を保たれており、β遮断薬(メトプロロールかビソプロロール)を長期投与した群と投与しなかった群に1:1で割り振り中央値3.5年(2.2~4.7年)の期間観察して、いかなる原因の死亡と新たな心筋梗塞発症を有害事象評価項目としてその総数を比較しました。患者の平均年齢は65歳で女性は22.5%を占め、95.5%にPCIが施行され、冠動脈バイパス術は3.9%に施行されています。β遮断薬の投与量中央値は、メトプロロール100mg、ビソプロロール5mgでした。解析の結果、評価項目の有害事象は観察期間中にβ遮断薬投与群で199例、非投与群で208例発生し、ハザード0.96と両群間に有意差はありませんでした。つまり、心不全の無い(左室駆出率>50%)・早期に再灌流療法の行われた急性心筋梗塞症例にはβ遮断薬投与は必ずしも必要ない事をこの研究は示唆しています。
この研究を踏まえ、直ちに治療指針は改訂されるでしょうか?左室駆出率の低下した心不全症例には、今まで通りβ遮断薬投与は推奨されるでしょうし、心不全のグレーゾーンの左室駆出率40~49%の症例にも引き続き投与されるでしょう。
この研究では非投与群の14%に途中でβ遮断薬治療が開始されており、β遮断薬投与群の18%が1年後に投与脱落する交差状態の影響を無視する事は困難で、現時点では結論は出ません。しかし、急性心筋梗塞でPCIを施行された症例には2種類の抗血小板剤・スタチン・心保護作用のある降圧剤数種類・消化器潰瘍治療剤等多くの薬剤が開始される事が通常なので、少しでも不要な薬剤を減らす事は今後必要になるでしょう。
Hospital + Note 2 | TOP
22/May/2024
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24

25

26 27 28
PAGE TOP

筑豊情報マガジンWINGの
おすすめ記事がLINEに届く!

LINEアカウントを友だち追加