03: 新しいミネラルコルチコイド受容体拮抗薬
フィネレノン(Finerenone:商品名 ケレンディア®)は、2022年6月に発売されたミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬の一つで、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(但し末期腎不全、透析療法中の症例は除く)に適応があります。
代表的な内因性ミネラルコルチコイドのアルドステロンは副腎皮質から分泌され、主に遠位尿細管に作用して尿中のナトリウム(Na)の再吸収・カリウム(K)の排出を促し、それに伴い循環血漿量も増加して血圧を上昇させます。他にもアルドステロンには、血管の収縮作用・血管平滑筋の成長・心筋の肥大化促進・血小板凝集能の亢進・膠原繊維の増加・組織の線維化の促進・炎症反応の促進などの作用を持ち、アルドステロンの受容体であるMRは、腎臓・心臓・血管・白血球の一種のマクロファージ・腸管・眼にも存在します。そして2型糖尿病症例の腎機能の低下にはMRの過剰活性化による腎臓組織の炎症反応・線維化が重要な役割を果たしている事が判明しています。
抗アルドステロン剤/MR拮抗剤は以前からあり、スピロノラクトン・エプレレノン・エサキセレノンなどが挙げられますが、高血圧・心不全の治療に用いられています。
フィネレノンは、非ステロイド型MR拮抗薬なので、スピロノラクトン・エプレレノンに見られた女性化乳房・月経不順などの副反応は少なく、MRへの選択性が非常に高く、他のMR拮抗薬より高K血症に成り難い為、腎機能低下を抑制・蛋白尿を減少させる迄十分な用量を投与出来る特徴があります。
New England Journal of Medicine誌に2020年12月に発表されたFIDELIO-DKD研究、2021年12月に発表されたFIGARO-DKD研究でフィネレノンはその有効性が確認されました。
FIGARO-DKD研究は、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病症例を対象に標準治療にフィネレノンを上乗せした事による、心筋梗塞/脳卒中/心不全による入院・心血管死などの心血管複合評価項目への有効性を調査しています。登録数7437症例を無作為化し、中央値3.4年の期間観察し、フィネレノン追加群はプラセボ群に較べ、心血管事故が発生する確率が13%低く、特に心不全による入院者数は29%も低い事が判りました。
FIGARO-DKD研究に登録された患者背景を見ますと、慢性腎臓病として、推定糸球体濾過量は60~90㎖/min/1.73m²と軽度腎機能低下群が60%近くを占め、微量アルブミン尿症例と顕性アルブミン尿症例が半数ずつとの特徴があります。慢性腎臓病の早期からフィネレノンを使用する事の重要性を示唆していると考えられます。
FIDELIO-DKDの解析結果では、フィネレノンは12ヶ月の投与で収縮期血圧を平均2.1mmHgしか下げておらず、降圧作用は控えめな様です。
循環器医としては、将来フィネレノンに、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病の有無に関係なく、慢性心不全への適応が追加されないか、興味深く見守っています。
代表的な内因性ミネラルコルチコイドのアルドステロンは副腎皮質から分泌され、主に遠位尿細管に作用して尿中のナトリウム(Na)の再吸収・カリウム(K)の排出を促し、それに伴い循環血漿量も増加して血圧を上昇させます。他にもアルドステロンには、血管の収縮作用・血管平滑筋の成長・心筋の肥大化促進・血小板凝集能の亢進・膠原繊維の増加・組織の線維化の促進・炎症反応の促進などの作用を持ち、アルドステロンの受容体であるMRは、腎臓・心臓・血管・白血球の一種のマクロファージ・腸管・眼にも存在します。そして2型糖尿病症例の腎機能の低下にはMRの過剰活性化による腎臓組織の炎症反応・線維化が重要な役割を果たしている事が判明しています。
抗アルドステロン剤/MR拮抗剤は以前からあり、スピロノラクトン・エプレレノン・エサキセレノンなどが挙げられますが、高血圧・心不全の治療に用いられています。
フィネレノンは、非ステロイド型MR拮抗薬なので、スピロノラクトン・エプレレノンに見られた女性化乳房・月経不順などの副反応は少なく、MRへの選択性が非常に高く、他のMR拮抗薬より高K血症に成り難い為、腎機能低下を抑制・蛋白尿を減少させる迄十分な用量を投与出来る特徴があります。
New England Journal of Medicine誌に2020年12月に発表されたFIDELIO-DKD研究、2021年12月に発表されたFIGARO-DKD研究でフィネレノンはその有効性が確認されました。
FIGARO-DKD研究は、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病症例を対象に標準治療にフィネレノンを上乗せした事による、心筋梗塞/脳卒中/心不全による入院・心血管死などの心血管複合評価項目への有効性を調査しています。登録数7437症例を無作為化し、中央値3.4年の期間観察し、フィネレノン追加群はプラセボ群に較べ、心血管事故が発生する確率が13%低く、特に心不全による入院者数は29%も低い事が判りました。
FIGARO-DKD研究に登録された患者背景を見ますと、慢性腎臓病として、推定糸球体濾過量は60~90㎖/min/1.73m²と軽度腎機能低下群が60%近くを占め、微量アルブミン尿症例と顕性アルブミン尿症例が半数ずつとの特徴があります。慢性腎臓病の早期からフィネレノンを使用する事の重要性を示唆していると考えられます。
FIDELIO-DKDの解析結果では、フィネレノンは12ヶ月の投与で収縮期血圧を平均2.1mmHgしか下げておらず、降圧作用は控えめな様です。
循環器医としては、将来フィネレノンに、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病の有無に関係なく、慢性心不全への適応が追加されないか、興味深く見守っています。
1/Jul/2022