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31: 糖尿病に合併した高血圧への厳格な降圧療法
糖尿病に合併した高血圧に対して収縮期血圧を120mmHg未満にコントロールした症例は、収縮期血圧を140mmHg未満にコントロールする標準的な降圧治療症例に較べ、主要心血管事故を有意に減らした、との臨床研究の結果が2024年11月16日のNew England Journal of Medicineニューイングランド ジャーナル オブ メディシンに掲載されました。
中国の145施設が参加し、50歳以上の2型糖尿病を合併した高血圧症例を、収縮期血圧120mmHg未満に強力な降圧療法で低下させる群と収縮期血圧140mmHg未満を目標とした標準降圧療法群に2群に無作為に抽出し振り分け、5年間の観察期間に非致死的な脳卒中・非致死的な心筋梗塞・心不全での入院/加療・心血管死などの有害事象の発症数を比較しました。2019~2021年にかけて登録された総数12,821症例の内、強力降圧療法群は6414例、標準降圧療法群は、6407例で症例の平均年齢は63.8±7.5歳でした。強力降圧療法群は、1年後には平均収縮期血圧121.6mmHg、標準降圧療法群は一年後には平均収縮期血圧133.2mmHgでした。平均4.2年の観察期間中に、有害事象発生数は強力降圧療法群393例で標準降圧療法群は492例、ハザード比0.79と有意に強力降圧療法群で低い事が判りました。
同様の臨床研究では、2010年にACCORD研究が糖尿病に合併した高血圧に対する収縮期血圧120mmHg未満の厳格降圧療法群と140mmHg未満の標準療法群の非致死的な脳卒中・非致死的な心筋梗塞・心血管死などの有害事象の発生には有意差は見られなかった、と報告しています。非糖尿病合併の高血圧症例に対する厳格降圧療法群と標準降圧療法群を比較した2015年のSPRINT試験では、有害事象は厳格療法群でハザード比0.75と有意に低かったと発表しています。
これらの違いは何に因るのでしょうか。今回の結果を報告した中国の研究グループは、ACCORD研究は主要心血管事故の発生頻度を標準療法で年間4%/100症例と想定してサンプルサイズ(抽出症例数)を総数4733例と低く見積もった為に十分な差異を識別する統計学的強度が足りなかったのだ、と説明しています。因みにSPRINT試験は主要心血管事故の発生頻度を標準療法群で年間2%/100症例と計算しサンプルサイズは総数9361例、この中国の研究も主要心血管事故の発生頻度を標準療法群で年間2%/100症例と推定しサンプルサイズは12,821例です。
現在の海外・日本国内のガイドラインでは、糖尿病に合併した高血圧症例は目標血圧130/80mmHg未満が望ましいと記載されていますが、今回の研究はその根拠となり得ると考えられます。
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