35: アレルギー性疾患と食事の関連性
アトピー性皮膚炎・アレルギー性喘息・アレルギー性結膜炎・アレルギー性鼻炎などのアレルギー性疾患は、近年増加傾向にあり、遺伝的要因と食物を含む環境的要因が複雑に絡み合っていると想定されます。
アレルギー性疾患と、ある特定の食物摂取との関連性は、過去二~三十年の間調べられてきましたが、一貫性が無く相反する結果が出ていました。例えば、アトピー性皮膚炎の子供に対して卵と牛乳を食事から除去すると痒みが減少し睡眠状態が改善した、との横断的研究があれば、逆に、ある同様のクロスオーバー研究では、アトピー性皮膚炎で卵と牛乳を除外した群は対照群と比較して有意な改善は無かったと報告しています。横断的研究では、結果に影響を及ぼす他の交絡因子の効果が混ざっており、ある特定の因子の因果性を証明するのは、アレルギー性疾患に於いては困難と考えられます。
無作為化比較試験(RCT)は、不明な交絡因子があってもその効果を除外できる優れた方法ですが、一つの因子についての介入効果しか一つのRCTでは評価できず、時間と労力と費用が掛かり、症例によっては倫理的に問題となる場合もあります。
2025年2月15日にDermatologic Therapy誌に発表された論文で、中国の研究グループは、メンデル無作為化解析(MRA)という方法を用いて、34の食物・飲み物とアレルギー性疾患の関連性について報告しました。遺伝法則を最初に研究・報告したメンデルの名前を付けたこのMRAは、遺伝情報の一塩基多様性をある特定因子の曝露に関連する操作変数として用い、効果的に無作為化した擬似実験に基づいて研究する方法で、RCTの様に実際に介入する必要は無く、交絡因子の影響を最小限に抑えて簡便に様々な因子の効果を評価できます。研究は、欧州の大規模なゲノムワイド関連解析(GWASs)の情報を基に行われました。
その結果、豆を挽いて入れたコーヒーの摂取量が多いとアトピー性皮膚炎の進行を減らし(オッズ比:0.71)、ワイン・リキュールなどのアルコールの月平均摂取量が多いとアトピー性皮膚炎の危険性は上昇していました(オッズ比1.64)。アレルギー性喘息でもドリップコーヒーの摂取増加は、喘息発症の危険性を低下させていました(オッズ比:0.73)が、蒸留酒(オッズ比:4.24)とサクランボ(オッズ比:2.79)は危険性を上げていました。アレルギー性結膜炎では、ビールとシードル(林檎酒)が発症危険性をさげていました(オッズ比:0.5)。アレルギー性鼻炎では、34の食物・飲み物因子との関連性はありませんでした。
この分析結果は、直ぐに我が国に当てはまるでしょうか?研究資料が欧州由来で、人種差を除外出来ない可能性があります。兎に角これは、最先端の統計学手法の臨床研究への応用であり、今後様々な対象にMRAは適用されるでしょう。
アレルギー性疾患と、ある特定の食物摂取との関連性は、過去二~三十年の間調べられてきましたが、一貫性が無く相反する結果が出ていました。例えば、アトピー性皮膚炎の子供に対して卵と牛乳を食事から除去すると痒みが減少し睡眠状態が改善した、との横断的研究があれば、逆に、ある同様のクロスオーバー研究では、アトピー性皮膚炎で卵と牛乳を除外した群は対照群と比較して有意な改善は無かったと報告しています。横断的研究では、結果に影響を及ぼす他の交絡因子の効果が混ざっており、ある特定の因子の因果性を証明するのは、アレルギー性疾患に於いては困難と考えられます。
無作為化比較試験(RCT)は、不明な交絡因子があってもその効果を除外できる優れた方法ですが、一つの因子についての介入効果しか一つのRCTでは評価できず、時間と労力と費用が掛かり、症例によっては倫理的に問題となる場合もあります。
2025年2月15日にDermatologic Therapy誌に発表された論文で、中国の研究グループは、メンデル無作為化解析(MRA)という方法を用いて、34の食物・飲み物とアレルギー性疾患の関連性について報告しました。遺伝法則を最初に研究・報告したメンデルの名前を付けたこのMRAは、遺伝情報の一塩基多様性をある特定因子の曝露に関連する操作変数として用い、効果的に無作為化した擬似実験に基づいて研究する方法で、RCTの様に実際に介入する必要は無く、交絡因子の影響を最小限に抑えて簡便に様々な因子の効果を評価できます。研究は、欧州の大規模なゲノムワイド関連解析(GWASs)の情報を基に行われました。
その結果、豆を挽いて入れたコーヒーの摂取量が多いとアトピー性皮膚炎の進行を減らし(オッズ比:0.71)、ワイン・リキュールなどのアルコールの月平均摂取量が多いとアトピー性皮膚炎の危険性は上昇していました(オッズ比1.64)。アレルギー性喘息でもドリップコーヒーの摂取増加は、喘息発症の危険性を低下させていました(オッズ比:0.73)が、蒸留酒(オッズ比:4.24)とサクランボ(オッズ比:2.79)は危険性を上げていました。アレルギー性結膜炎では、ビールとシードル(林檎酒)が発症危険性をさげていました(オッズ比:0.5)。アレルギー性鼻炎では、34の食物・飲み物因子との関連性はありませんでした。
この分析結果は、直ぐに我が国に当てはまるでしょうか?研究資料が欧州由来で、人種差を除外出来ない可能性があります。兎に角これは、最先端の統計学手法の臨床研究への応用であり、今後様々な対象にMRAは適用されるでしょう。
31/Mar/2025