36: 肺動脈性肺高血圧に新しい治療薬
肺高血圧は、右心カテーテルで平均肺動脈圧が20mmHg以上の状態を指します。肺動脈性肺高血圧は、末梢の肺動脈の血管壁が肥厚・増殖し、肺血管が収縮して肺血管抵抗が増加し肺高血圧となる進行性の疾患で、明らかな基礎疾患の無い特発性・遺伝性のある病態が多く、若年の女性に多い、指定難病の一つです。
有力な治療法が無かった1991年での米国からの報告では、発症してからの平均生存期間は2.8年でした。その後、プロスタサイクリン類似体のエポプロステノール・トレプロスチニル・イロプロスト・ベラプロスト・セレキシパグ、NO経路のsGC刺激剤のリオシグアト・PDE5阻害剤のシルデナフィル・タダラフィル、エンドセリン受容体拮抗剤のアンプリセンタン・ボセンタン・マシテンタン、などの治療薬が肺血管拡張作用を期待して開発され、2022年の報告では、3年生存率90%、5年生存率84%と予後は改善しました。
Sotatercept(ソタテルセプト)は、アクチビン-シグナル伝達阻害剤で、血管細胞増殖を抑制する作用を有し、これまでの肺血管拡張作用を期待する肺動脈性肺高血圧治療薬とは違う機序の肺動脈性肺高血圧の新しい治療薬です。
2025年3月31日 New England Journal of Medicine誌に公表されたZENITH試験は、重症の肺動脈性肺高血圧例に対するSotaterceptの効果を検証する、プラセボ対照無作為化比較試験です。WHO機能分類Ⅲ、Ⅳの死亡リスクの高い172例の既に最大用量の2,3種類の肺動脈性肺高血圧治療薬が投与されている症例をsotatercept追加投与群とプラセボ追加投与群に1:1にそれぞれ86症例ずつ無作為化して振り分け、観察期間中の死亡・肺移植・症状悪化による24時間以上の入院などの複合評価項目事象発生数、発生までの期間を比較しました。その結果、sotatercept群の評価項目事象発生は15症例で認めたのに対してプラセボ群では47症例で認め、ハザード比0.24とsotatercept群で圧倒的に低かった為、倫理的理由で試験は早期に中止されました。sotatercept投与群の主な副反応は、鼻出血と毛細血管拡張でした。
2025年3月29日に日本循環器学会の「肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン」が新しく改訂されました。Sotaterceptは、日本では未承認ですが、ガイドラインでは中~重症例において既存の三系統の薬剤併用療法に追加する4系統目の薬剤として期待されると、位置付けています。
近いうちに日本でもSotaterceptは薬価収載されるでしょう。
有力な治療法が無かった1991年での米国からの報告では、発症してからの平均生存期間は2.8年でした。その後、プロスタサイクリン類似体のエポプロステノール・トレプロスチニル・イロプロスト・ベラプロスト・セレキシパグ、NO経路のsGC刺激剤のリオシグアト・PDE5阻害剤のシルデナフィル・タダラフィル、エンドセリン受容体拮抗剤のアンプリセンタン・ボセンタン・マシテンタン、などの治療薬が肺血管拡張作用を期待して開発され、2022年の報告では、3年生存率90%、5年生存率84%と予後は改善しました。
Sotatercept(ソタテルセプト)は、アクチビン-シグナル伝達阻害剤で、血管細胞増殖を抑制する作用を有し、これまでの肺血管拡張作用を期待する肺動脈性肺高血圧治療薬とは違う機序の肺動脈性肺高血圧の新しい治療薬です。
2025年3月31日 New England Journal of Medicine誌に公表されたZENITH試験は、重症の肺動脈性肺高血圧例に対するSotaterceptの効果を検証する、プラセボ対照無作為化比較試験です。WHO機能分類Ⅲ、Ⅳの死亡リスクの高い172例の既に最大用量の2,3種類の肺動脈性肺高血圧治療薬が投与されている症例をsotatercept追加投与群とプラセボ追加投与群に1:1にそれぞれ86症例ずつ無作為化して振り分け、観察期間中の死亡・肺移植・症状悪化による24時間以上の入院などの複合評価項目事象発生数、発生までの期間を比較しました。その結果、sotatercept群の評価項目事象発生は15症例で認めたのに対してプラセボ群では47症例で認め、ハザード比0.24とsotatercept群で圧倒的に低かった為、倫理的理由で試験は早期に中止されました。sotatercept投与群の主な副反応は、鼻出血と毛細血管拡張でした。
2025年3月29日に日本循環器学会の「肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン」が新しく改訂されました。Sotaterceptは、日本では未承認ですが、ガイドラインでは中~重症例において既存の三系統の薬剤併用療法に追加する4系統目の薬剤として期待されると、位置付けています。
近いうちに日本でもSotaterceptは薬価収載されるでしょう。
30/Apr/2025