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42: 腎デナベーション:新たな高血圧治療法
2025年9月1日に日本でも腎デナベーション(RDN: renal denervation)治療装置2種類が保険適応となりました。RDNは、腎除神経術・腎脱神経術の意味で、以前は腎交感神経焼灼術とも呼ばれて、ヨーロッパでは2009年から行われ、米国でも2023年に食品医薬局に認可され現在世界70カ国以上で行われています。
自律神経の1種である交感神経は活性が亢進しますと、血圧を上昇させ、心拍数を増加させ、特に腎臓に於いては血圧を上昇させるレニンの分泌を促進させ、ナトリウムの再吸収を増加させ、腎血管抵抗を増加させるなどの作用で血圧を上げます。高血圧症例の中にはこの交感神経が異常に活性化されているものが含まれると考えられています。
RDNは腎動脈にカテーテルを進め、腎動脈周囲の交感神経を電気か超音波を用いて多方向/複数ヶ所焼灼して交感神経を抑制する治療法です。
初期の著明な有効性を示した臨床研究の後、2014年にRDNは有意な降圧効果を示さなかった、との衝撃的なランダム化比較試験の結果が出て以来、装置・手技の改良、臨床試験デザインの見直しが行われ、2015年から2023年までに行われた複数のランダム化比較試験では対照群と比較しての有意な有効性が確認されました。
ヨーロッパ高血圧学会の2023年の治療指針では、RDNは治療抵抗性の高血圧に対する治療の選択肢の一つとして推奨されており、この治療抵抗性の高血圧とは、サイアザイドを含む3種類の降圧剤を最大容量用いても診察室での血圧が140/90mmHg以上の状態を指しています。そして、推定糸球体濾過量が40ml/分/1.73㎡以上の腎機能を有し、二次性高血圧を除外した症例にRDNの適応がある、と声明を出しています。アメリカ心臓協会の2024年のRDNに対する公式声明では、更に妊娠症例・線維筋異形成症例・腎動脈にステント留置例・腎動脈瘤症例・著明な腎動脈狭窄症例・腎/副腎腫瘍例は適応外と述べており、日本の高血圧循環器心血管インターベンション治療学会、三学会共同の2025年9月24日の声明も前述二つの学会の声明に添うものです。
RDNが有効と考えられる症例の特徴として、重症高血圧・若年成人・肥満を伴う・睡眠時無呼吸症候群がある・アジア系である、を挙げている論文もあり、将来RDNの適応が期待されるのに、慢性腎臓病・慢性心不全・心房細動・2型糖尿病・心室性頻拍など自律神経のバランス改善が病態の制御に重要な疾患が挙げられます。
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31/Oct/2025
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