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43: 高齢心筋梗塞症例への多領域リハビリテーション
急性心筋梗塞後の高齢者に対する多領域リハビリテーションの効果を検証するPIpELINE(パイプライン)試験の結果が2025年9月11日にNew England Journal of Medicineニューイングランド ジャーナル オブ メディシン誌に掲載されました。
心筋梗塞後のリハビリテーションが心血管有害事象発生を減らす事は、これまで幾つもの臨床研究で示されています。しかし、そのリハビリテーションの内容は若年者の症例を念頭に置いたもので、高齢者には負担が大きく、脱落者も多く有効ではありませんでした。
PIpELINE試験では高齢者に特化した、心血管危険因子の管理・食事/栄養指導・運動療法の組み合わさった多領域リハビリテーションを行っています。研究のデザイン・手順・手続きの詳細は、Aging Clinical and Experimental Researchエイジング クリニカル アンド エクスペリメンタル リサーチ(2023)35:1107〜1115に記載されていますが、急性心筋梗塞で入院した症例の退院後30日に対照群・介入群共に先ずはShort Physical Performance Batteryショート フィジュカル パフォーマンス バッテリー
(SPPB:簡易身体機能評価列)で下肢のバランス機能・歩行速度・反復する起立運動の速さを評価します。2020年3月27日~2023年11月30日の期間にSPPB4点~9点の回復の可能性がある身体活動が中等度低下した中央値80歳(75~84歳)のST上昇心筋梗塞(STEMI)・非ST上昇心筋梗塞(NSTEMI)512症例を介入群と対照群に2:1で割り振ります。対照群・介入群共に最初に食事指導(飽和脂肪酸・塩分・糖分過多の食事を避け、野菜・果物・水分を十分補給し、赤身の肉を制限し、豆類を多く摂取し、魚類を週2回以上摂取する、地中海式食事を勧めるなど)、禁煙指導、BMI18.5~24.9の体重コントロール指導、20分の歩行・自転車運動を週5回の運動指導、ストレス管理法の指導等を行います。介入群は更に60・90・180・270・360日後にそれぞれ栄養士による食事指導、オタゴ運動プログラムに基づいての運動指導、ボルグ指数で11~13のややきつい運動負荷を個別に運動計画立案、服薬指導を行います。主要評価項目は、一年以内での心血管死と心血管疾患が原因の予期しない入院です。
その結果、介入群は対照群と比較して主要評価項目発生の割合がハザード比で0.57と低く、特に予定外の入院ではハザード比0.48と低い事が判りました。
2022年に発表されたFINGER試験も含め、今回の研究結果は心血管疾患への頻回の多領域介入の有効性を示しており、高齢化社会の日本では医療経済的にも重要な知見と考えられます。
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28/Nov/2025
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