44: 十分な水分補給は加齢を遅らせるかもしれない
中年期以降に十分に水分補給をする事は、老化を遅らせる可能性がある事を示唆する研究がLancet eBioMedicineに2023年1月2日発表されました。
マウスの実験では長期間の水分制限は寿命を縮め退行性変化を促進する事が知られています。人間でも十分な水分補給は老化を遅らせる、との仮説を検証する為に、米国の国立心肺血液研究所のグループがARIC研究の一部として行いました。
1987~89年に登録された米国の45~66歳1,5792症例に対して1990~92年の期間、1993~95年の期間、1996~98年の期間、2011~13年の期間に検査・調査されました。健常人では、水分不足時には血清ナトリウム(Na)値が上昇します。水分補給量の指標として研究グループはNa値を用いました。浸透圧・水分調節バランスに影響を与える正常Na値の(135~146mmol/ℓ)範囲外、血糖値が140mg/㎗以上、BMIが35以上の肥満症例を除外し、11,255症例でNa値と死亡率・慢性疾患発症数を比較し、生物学的年齢算出の指標の血圧・コレステロールに影響を与える降圧剤・高脂血症治療薬を内服している症例も除外し6,956症例について生物学的年齢と暦年齢の差、死亡率・慢性疾患発症率を比較しています。登録時と1990~92年間での調査(Visit2)時の平均でNa値は計算し、Visit2での生理的指標(収縮期血圧・推定糸球体濾過量・尿素窒素・シスタチンC・クレアチニン・尿酸値・努力呼気量・血糖値・コレステロール値・HbA1c・糖化アルブミン・フルクトサミン・CRP・アルブミン・βミクログロブリン値)からKlemera-Doubal法で生物学的年齢を算出しています。
解析の結果、中年期のNa値が142mmol/ℓ以上の群では心不全・認知症・慢性肺疾患・脳卒中などの慢性疾患発症のリスクがNa値138.5~139.5mmol/ℓの群に較べて39%高く、早期死亡の危険性はNa値144mmol/ℓ以上の群でNa値137~142mmol/ℓの群より21.5%高い事が判りました。Na値142mmol/ℓ以上では生物学的年齢が暦年齢より高い(年齢より老けている)事と有意に関連しており(オッズ比1.50)、生物学的年齢の高さは慢性疾患発症の危険性(ハザード比1.70)、早期死亡の危険性の上昇(ハザード比1.59)との関連が認められました。
健康な成人で毎日体重1kg当たり30㎖の水分補給を勧める文献や、食事も含め男性で3.7ℓ/日・女性で2.7ℓ/日の水分摂取を勧める海外の文献もあります。水分補給は、過剰に行うと水中毒になり却って健康を害する危険性があり、基礎疾患によっても適切な水分摂取量は異なります。掛かりつけ医に相談されて下さい。
マウスの実験では長期間の水分制限は寿命を縮め退行性変化を促進する事が知られています。人間でも十分な水分補給は老化を遅らせる、との仮説を検証する為に、米国の国立心肺血液研究所のグループがARIC研究の一部として行いました。
1987~89年に登録された米国の45~66歳1,5792症例に対して1990~92年の期間、1993~95年の期間、1996~98年の期間、2011~13年の期間に検査・調査されました。健常人では、水分不足時には血清ナトリウム(Na)値が上昇します。水分補給量の指標として研究グループはNa値を用いました。浸透圧・水分調節バランスに影響を与える正常Na値の(135~146mmol/ℓ)範囲外、血糖値が140mg/㎗以上、BMIが35以上の肥満症例を除外し、11,255症例でNa値と死亡率・慢性疾患発症数を比較し、生物学的年齢算出の指標の血圧・コレステロールに影響を与える降圧剤・高脂血症治療薬を内服している症例も除外し6,956症例について生物学的年齢と暦年齢の差、死亡率・慢性疾患発症率を比較しています。登録時と1990~92年間での調査(Visit2)時の平均でNa値は計算し、Visit2での生理的指標(収縮期血圧・推定糸球体濾過量・尿素窒素・シスタチンC・クレアチニン・尿酸値・努力呼気量・血糖値・コレステロール値・HbA1c・糖化アルブミン・フルクトサミン・CRP・アルブミン・βミクログロブリン値)からKlemera-Doubal法で生物学的年齢を算出しています。
解析の結果、中年期のNa値が142mmol/ℓ以上の群では心不全・認知症・慢性肺疾患・脳卒中などの慢性疾患発症のリスクがNa値138.5~139.5mmol/ℓの群に較べて39%高く、早期死亡の危険性はNa値144mmol/ℓ以上の群でNa値137~142mmol/ℓの群より21.5%高い事が判りました。Na値142mmol/ℓ以上では生物学的年齢が暦年齢より高い(年齢より老けている)事と有意に関連しており(オッズ比1.50)、生物学的年齢の高さは慢性疾患発症の危険性(ハザード比1.70)、早期死亡の危険性の上昇(ハザード比1.59)との関連が認められました。
健康な成人で毎日体重1kg当たり30㎖の水分補給を勧める文献や、食事も含め男性で3.7ℓ/日・女性で2.7ℓ/日の水分摂取を勧める海外の文献もあります。水分補給は、過剰に行うと水中毒になり却って健康を害する危険性があり、基礎疾患によっても適切な水分摂取量は異なります。掛かりつけ医に相談されて下さい。
26/Dec/2025